迷言Vol5(記録より記憶)

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迷言Vol5(記録より記憶)


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元気な肝臓と引き換えに頑張った3ヶ月、指令を額面どおりに受け取り行動するも・・・ (またしてもイメージダウン必至の自虐ネタ)



Vol.5 記録より記憶


今現在は薬屋を営みつつ、このホームページで書かなくていいことばかり書いている私ですが、若かりし日は某機関において、そこそこ期待されていたような・・・  おっと、もしかしたら思い違いかもしれませんので本気にしないように!

 

(研修参加)

あれは確か25歳の春、私はとある研修を受けさせてもらえることとなった。4月から約3ヶ月間という長期研修だ。

それは、北海道から沖縄まで全国津々浦々の様々な機関から選りすぐり精鋭150名くらいが集められる歴史ある研修で、受けたくともそう簡単には受けることが出来ない風の噂に聞く程度の特例的なものだった。


その年、私の所属する機関に参加者1名分が割り当てられたのだろう。年齢・経歴でいうと、私より先に行くべき先輩方は数多く在籍していた(というより、私は年齢的に飛び抜けて下っ端だった)のだが、上が勘違いしたのだろうか?  そんなわけはないだろうが意外な人選といえた。

しかし、たとえそうであったとしても上に向かって「勘違いしていますよ!」などと指摘する必要は無い。場所は東京、知り合いが居る。そしてなにより、約3ヶ月もの間、通常の仕事をしなくても良いのだ! オイオイ・・・


その研修は終了時に相当難しい試験をすると聞いていた。

そこで上位何割かの優秀者となると、それだけで給料が半年前倒しでアップするという好条件。

そんな状態では誰もが頑張るというもの。「経歴の長さ」か「超優良な頭脳」がものをいいそうだが、残念なことに私はどちらも持ち合わせていない。そもそも参加者の中には 、今の私より年配の方も 居るというではないか、まさに大人と子どもで勝負にならないのは目に見えている(汗


まぁ、最初から「勉強頑張るぞ!」などと思いはしませんでしたが・・・



(特命受諾)

その研修が始まる少し前のある日、私は上司Aに呼ばれこんなことを言われた

 


上司A: テストの点数なんかどーでもいいんや、そんなことより名前売って来い!

 



ん?


テストの点数なんかどうでもいい?


名前売って来い?




脳: 混乱 ⇒ 真っ白 ⇒ ハッチャケタ!!


そっ、そりゃそうですよねーーー!!!!

大人がテストの点数を気にしてどーすんのって話ですよね!

世の中、名前売ってなんぼですよね!



なんて夢のあるミッションなのだろう。そしてその為に私が選ばれたとは・・・ 光栄至極、人を見る目がありますなw

以前から上司Aは侍のニオイがすると感じていたが間違いではなかったようだ。現代人が過去に置き忘れてきた何かを持ち続けている。 記録より記憶といったところだろう、人としてどうあるべきか? 示唆に富んでいるではないか。



それにしても、名前を売るって・・・


10年後、20年後、受講者がその研修を振り返った時、普通ならば講師の顔や講義内容の一つでも思い出すのかもしれないけれど、そんなものの全てが思い出せないくらいに 、頭に浮かぶことといえば私に関することとか私と一緒に行動したシーンばかり、そんな状況を作り出すことが私に課せられたミッションなのだろう。

普通にやっていたのでは無理っぽいが、やってやれなくもなさそうだ。もしかすると、テストで良い点を取ることに比べたらこんなのは大した仕事ではないのかもしれない。 フッ、 お任せあれ、期待以上の成果を上げてみせましょう!!



・・・これは夜が勝負だな。幸いなことに酒は弱い方ではない。

早速趣味のパチンコをやめて節約モードに。 しかし、3ヶ月で一体いくら使うのだろうか? そんなことは予想もできない。僅かな貯蓄は使い切る覚悟で臨むしかあるまい。



(現場にて)

さて、4月となり現場集合。予想どおり私は若く、年齢順でみると下から2番目だった。

周りはおんちゃん多数、普通なら私に仕事の指示をしなければならないクラスなのだが、研修なので指示も何も関係なく、友達のように接していた。というか、所属機関が全く違うので友達といった方がいいのかもしれないし、 もし仮に勉強がメインであったならライバルと呼べたのかもしれない。 モシジャナイ・・・


研修所には宿泊施設が併設されており、遠方より来た者はそこに泊まることになっていた。

私の部屋は5階建て建物の5階の一室、同じ階の仲間には年が若いこともあってか誰からも良くしていただき、やりたい放題。参加者全員に名前を売るのは疲れるので、とりあえず5階住人と、班割りで同じ班になった方々だけでも私の存在を深層心理に焼き付けることにした。 (といっても、羽目を外しただけですが)

 

夜毎繰り広げられる飲み会で結構お金を使ったけれど、毎日外に飲みに出るわけではなく自習室(5階用)や、5階住人の誰かの部屋に集まって騒いでいることも多かった。 各々が全国各地から集まっているだけに送られてくる宅急便(地酒&名産品)はバラエティに富み楽しめると同時に、おかげさまで金欠になることは無かった。(ギリギリでしたが・・・)



私は毎日朝方まで騒ぎ続けながらも元気を維持していた。

普通はこんなことを続けられるわけもないが、テストの点数なんかどうでもいいのだから、日中は講義室にタオルを持ち込んで寝ていた。。。 貴重な講義を台無しにしてしまったが、テストで良い点数をとる ことと名前を売ることの両立は最初から不可能に近い。3ヶ月も続くわけがないのだ。



しかし、誰しも飲みに来ているわけではないし、私のように特別なミッションを与えられているわけでもない。やるべきことの第一として考えられるのは「勉強」だろう。当たり前ですが。。。 しかも、私のように若く はないのだからそれなりの立場に在り、ヘナチョコな点数を取ってしまうと部下に示しが付かなくなるかもしれない恐怖。


ということで、宴会は毎日開催されていたものの、いつも全員参加というわけではなく勉強に打ち込む方々だって居るのですが、自習室は既に飲んだくれが占拠してしまっているので自室で勉強することになります。自習室と各自の部屋は近 く、声が良く通るので「うるさくて勉強できない」と言われてしまうことも・・・。 人ごとのような顔をしていると、私の声が響いてうるさいのだと言う。まぁ、仲間内なので目くじら立てて怒るということもなかったのですが、後半に差し掛かった頃にはあるところから苦情が寄せられた。それは3階の住人からであった。。。 どんだけうるさいんだ・・・ と 思ったけれど、どうやらこちらも私の声が原因らしい(汗)。



(討論、そして発表)

そんな日々を送る中、研修も残り二週間くらいの頃だったろうか、班毎に課題を選んでそれに対する討論結果を発表するという時間が設けられた。それは日中、普段なら熟睡している時間帯だ。

 

発表前夜、班で集まって討論をするも発表できる程度の内容にまで煮詰まる状態ではなかった。班長は居るのだが何を言っても的外れで、せっかく議論が一歩進んでも簡単に 振り出しに戻してしまう離れ技連発の困ったちゃん、このままでは宴会に遅れてしまうではないか!

 

私: 班長はもうしゃべらなくていいです(怒)  ←対年上

 

班長: スミマセン・・・(涙目)  ←対年下

 

ミッションに従い班の中で十分にリーダーシップを発揮した状態の私がまとめなければ、一向に話が進展する気配がなかった。仕方が無いので私が課題の選定から問題点や改善法、話す順番まで全て提案したのだが、できればやりたくな いというのが本当の気持ちだった。何故なら、私一人の意見なだけに発表するのも私でなければ・・・ というか、誰もが今ひとつ理解していないような・・・ 酔っ払ってんのか コラーーーッ!!!!

ということで、予想どおり発表担当。全部一人でやってるようなものだが、そんなことはどうでも良い。問題は、発表時間が普段なら熟睡している時間帯なのだ。大丈夫だろうか?



(カンゾウ君ついに悲鳴を上げる)

その夜の宴会途中で、ハッキリと自覚できるほどに体調が悪くなった。

明らかに肝臓がいつものように働いていない!

しかし、「今日は体調が悪いので私はこれにて・・・」と逃げ腰ではミッションコンプリートが遠のくし、周りはきっとそんな私を認めてくれはしないだろう。

つらいけど、いつもどおり騒ぎまくった(アフォ)


さて、翌日は予定どおり発表会、思った以上に体調が悪い。

一応書いておいたメモ書きを見るのもつらい。目を閉じるだけで相当楽になるので、そのまま眠ってしまいたいほどだ。

なんとか発表を終えて質疑応答時間になると、どういうわけか最初の質問者が大きくズレた質問を投げかけてきた。その課題に関する実務をしたことが無いからか課題自体をうまく飲み込めていない。でも、そのズレを修正するエネルギーが湧かなくていい加減な返答をし てしまった(ハッキリ覚えていない)。その後はそのズレに引きずられたまま変な方向に発展してどうでもいい話に。泥酔会見は誰がやっても落とし穴にはまってしまうのはお約束、そんな人に喋らせてはいけない。


その日の夜も前日と同じように調子が悪い。アセトアルデヒドの代謝に不具合が生じたようだが、まぁよい、あと少しじゃないか!



(試験のあるところに試験勉強あり)

試験は前半と後半の2回、こちらも当たり前だが普段は寝ている時間帯に行われる苦行。

間近になると必然的に宴会の参加者は減ってゆく。

なんだか寂しいではないか。


「呼んでくる!」


と、勉強中の部屋に押しかけ、そのままそこが宴会場になったりしていると、次第に鍵を掛けて居留守とか。擦りガラス越しに動く人影が見えているのに返事が無いんですけど。。。


「今更勉強したってもう手遅れだぞーっ」


手遅れなのは私だけかもしれないのに人の足を引っ張る迷惑者。立場が逆なら関わりたくない。

しかも、これは単に自分の実力を試すだけのテストではない。給料が上がるかどうか、生活に直結する切実な問題とも言えるので、本来ならお酒など飲んでいる場合ではない し、真っ当な大人であるなら人様の邪魔をすることなど考え付きもしないだろう。



試験後半には誰が始めたのか、各試験の合間の休憩時間に自室に帰り酒を煽るという、仕事中とは思えない暴挙に。

といっても、私を含めた数名だけだが、他の人達がテキストを開いて最終チェックをしている時に何をやってるんだか・・・ もちろん、飲んだからといって試験結果が変わることはない。



(最終日前夜)

試験が終わると、それまであまり外に出なかった人達や5階以外の人達も含めて大勢で外に繰り出した。

飲み屋までの道中、並んで歩いていた通い組(家が関東)のBさんが私の部屋が5階だということを知ると、こうおっしゃった


B: 5階ですか、大変でしたね・・・


ん?  私のミッションを知っているかのような口ぶり。


私: いやいやー そんなことないですよー


B: そうですか? 5階にはとんでもない人がいて迷惑していると3階に泊っている人が〜ドータラコータラ〜


聞くと、それは明らかに私のことを指していた・・・


B: ただでさえ騒がしいのに、たまに下の階にも下りて来て騒ぐし、当たり前のように勉強の邪魔をするみたいで、みんな5階の悪魔って呼んでますよ。アハハ
















5階の悪魔!?










[ a ・ ku ・ ma ] なんだその不吉なネーミングは!!

正式な名前として認められることのないその漢字二文字は、仮に陰口であっても人に対して使うべきではないだろう。しかもそれを、面と向かって突き付けてしまうなど、知らなかったで済まされる問題ではないのではないか!?



私: その5階の悪魔って・・・  私ですね。。。


B: エェッ!! (本当に後ずさりした)


B: エット・・・ 今日は付いて行っていいですか・・・ね? ←対年下


私: 途中、路上で寝てしまっても起こしませんよ ←対年上


B: はい! ←対年下




(最終日)

翌日はもう最終日、帰り支度がある程度落ち着いたら、その日のために少し残しておいたお酒を飲みながら皆で3ヶ月間の出来事を懐かしむ座談会。

楽しい会話で盛り上がる中、Cさんが私ににじり寄って来てこう言った


C: 俺はテスト全然ダメだった。それは仕方ない。でも、山本君が優秀者になることだけは絶対に許ない。それだけは絶対許ない! 大丈夫なんだろうな・・・ ンン? (真剣顔)


私: 大丈夫ですよぉー


「大丈夫」という言葉はこんな使い方をするものなのか? そんなことより空気の重さが最終日に馴染まないよ〜(汗


その空気を年長Dさんが清々しいものへと変えてくださった


D: 心配しなくてもここに居る全員大丈夫に決まってるだろ!


断言、そして全員納得。。。



(ミッションコンプリート)

ともかく、長い期間と大金を費やしたミッションは一応成功したように思えた。

肝臓にいたっては、二度と研修前の元気さを取り戻すことは無くなってしまったが、名誉の負傷なのだから悔やむべき問題ではない。


しかしそれにしても、私に指令を下した上司Aはこの成果をうまく把握することができるのだろうか?

多くの方の心に刻み込まれたであろう私の存在も、そのまま胸にしまっておかれたらそれでお終いだし、そもそも仕事上の交流が一切無い方が大多数だ。概要を報告してもらうわけにもいかない内容だし・・・

まぁいいか、評価してもらう類のものでもないだろう。



(帰還)

職場に復帰すると、研修など無かったかのように仕事が始まる。

私が抜けていた時期は大変だったろうから、その分も働いてもらいたいというのもあるだろう。

ここで頑張らなければ、研修に行って馬鹿になったなどと思われてしまうかもしれない。しかし、馬鹿になったのは研修中だ、勘違いされては困る。



しばらく経過した時、変な噂が流れ始めた。そして上司Aに呼ばれた。


上司A: 研修で優秀者の一覧に入ってるって噂やけど、山本としてはどんな感触なんや?




へ?


まだ正式な結果は発表されていない。なんだこのデマは!?


私: そんなわけないですよー それは別の山本さんかもしれませんねー(笑


上司A: なに! 自信ないんか! いやいや、でも山本なら優秀者に入るだろ〜


私: ちょ・・・ イヤイヤ・・・ ソノカノウセイハアンマリ・・・・・・


上司A: あほう、3ヶ月も勉強して何言ってんや!


なんだか良く分からない展開、上司Aが冗談で言っているようには全然見えない。

聞き間違いなのか? >>テストの点数なんかどーでもいいんや、そんなことより名前売って来い!

困った(汗


この研修はテスト結果の点数や順位は本人にしか通知せず、優秀者かそうでないかだけが周知されるようになっていたハズだ。そこを利用するしかない。。。


私: もしかしたら結構いいところに行ってるかもしれませんけど、ギ、ギリギリのラインだとどうなるか分かりませんねぇ・・・ ヘヘッ


上司A: なんやそれ、一体何しに行ったんや・・・ (呆れ顔

 

何しにってそんな・・・

 

 

 

何とか「あまり期待しないで」って方向で話が収まりはしたものの、一体どうなっているのか、いや、「話が違う」と感じる時は大抵このパターンのように「話が違いすぎる」ものだ。自然現象の一つと捉えて諦めるしかない。

 

 

いろいろ心配したものの、それからしばらく経過すると、何故か本当に優秀者の枠に入っていると知らされることになった。

答え合わせも一切していないくらい気にも留めていなかったことなので信じられない話だが、昔からテストだけは良い点を取る傾向にあったので、今回もそういう面が出たのかもしれない。

頑張って得たものであれば喜びも大きいのだろうが、なんだか変な気持ちだった。前出のCさんや宿泊所5階住人の皆には決して伝えることのできない秘密ができてしまった。。。

 

 

この時点で職場では丸く収まりそうな雰囲気だったのだが、そうは問屋が卸さなかった。

私がミスリードしている点が二つあるかもしれないと不安に思っていたが、その予想は的中した。

 

>>テストの点数なんかどーでもいいんや、そんなことより名前売って来い!

 

@テストの点数はどうでもよい ⇒ ×(そんなわけない)

 

従って、

 

A名前を売って来い ⇒ ×(いらんことするな)

 

 

もう、過ぎ去った3ヶ月間の軌跡は私の胸の奥に仕舞っておくしかなさそうだ。

試験結果が良かっただけでも良しとしてくだされ・・・

 

 

 

試験結果発表後、不思議と立て続けに研修でご一緒した方々が私の在籍する機関に出張で訪れた。

選んで来ていたのか? そんな雰囲気だが本当のところは分からない。

 

来客があると上司Aが格好良く迎える。ウェルカ-ム!!

 

 

何も言わないでくれ〜〜 そっとしておいてくれ〜〜〜

しかし 願いも空しく、来訪から僅かな時間で上司Aが大声で怒鳴ることになる。

 

 

 

上司A:

やーまーもーとー、ちょっとこいコラ!

 

 

 

これが毎度のように・・・ 日々晒されてゆく真実に上司Aのエネルギーもどんどん目減りしてゆく。

 

なお、こちらから同僚が出張した時にも、同僚とは全く面識も無いし仕事上の関係も薄いくせにわざわざ顔を出して、余計な一言をお土産でくださる方多数。。。 優秀者になってしまった私が悪かったよ・・・。

 

 

 

普通にしていたら忘却の彼方へ、が当たり前。

記憶に残る行動は、普通ではないのかもしれない。

しかし、私が言うのもなんだけれど、あくまでも紳士的に。そう、わきまえなければ、このページに書いたようなことになって自分で振り返るのがツラくなる。

 

思いやりを持って、自分のことは後回しに・・・

私の過去が、どんな良い言葉も薄っぺらいものにしてしまう(汗

 

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