迷言Vol4(エイリアン)

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Vol.4 エイリアン

働き出した最初の2,3年の勤労状態によってその人の仕事に対する打ち込み方がほぼ決定づけられるという。


確かに、中途採用の時点で面接や学力テストを行ったところで、その人が

 

「向いていない可能性が高い」

 

ということはある程度判断できても、

 

「一所懸命に仕事に取り組んで全体的に良い影響を与えるかどうか?」

 

となると、まるで判別できず、実際に働き始めて数日から数ヶ月経過して「おぉ・・・そういうことか」となる場合がほとんど。

 

学歴や専門知識、面接を上手にこなす知識の有る無しはあまりアテにならず、責任感や思いやり、全体を見渡す力などが、「あの人は何を任せてもしっかりとこなす」ということに繋がっていると感じます。


更には、ベテランになってからも初心を忘れない謙虚さを持っていたり、周りの人を魅了するほどのオーラを放っていたりすれば最高ですが、まぁこちらはタヒぬほど苦労し地獄を見つつ、加えてタヒぬほど周りから褒められすぎて「他人から良く見られたい欲求」が無くなってしまった仙人の領域。

 

人事担当としてはこのような絶滅したか或いは最初から存在していないかもしれないパーフェクトな仕事人を最初から求めてはいけない。

 

そもそも、働き出せば会社ごとに存在する文化(誠実、不誠実、手取り足取り型、ほったらかし型など)に染まるのが当たり前。営業マンが会社の体を現しているのは真であり、溢れる素質を活かすも殺すも会社次第。

 

「良い人が入ってこないかなぁ?」では良い人が入ってくるハズもないし、「ウチの従業員はアフォばっかり!」と嘆く経営者はアフォ製造マシーンとして他人の人生を貶めているのかもしれない。

もちろん、従業員からは「ウチの経営陣はアフォばっかり!」と軽蔑されている可能性は高い。

 

世の中はエゴとエゴのぶつかり合いか!? 思いやりが足りないのだろうが、そう言う私だってエゴ丸出し、ただ方向性が「楽するためなら、とことん頑張る!」だったのがいけなかったか、

 

[ 頑張る ⇒ 仕事が楽になってきた兆し ⇒ 次の係へ異動(激務) ⇒ 頑張る・・・ ]

 

の繰り返し、このスパイラルを見て周りの人は「ツイてない」と言ったものだが、必然だったのだろうと今は思うし、頑張ることができただけでも良かったと思えます。 (精神が参る直前でしたが・・・)

 

 

まぁともかく、最初の2,3年が肝心!

私の場合、働き出した当初(遥か昔)は「やる気が今ひとつ出ない」といった状況でした。。。 これも運命を形作る一つの通過点だったのだろうか、当時はどうしても「やる気」が湧かず、普段より記憶力が劣っていることも自覚でき、「もっと向いている仕事があったんじゃないだろうか?」と思う日々。


そのままだったら今頃どうなっていたのか分かりませんが、大きな転機を迎え・・・ というより、一旦マシーンのように・・・  いや、あれはもう完全にマシーンだった。。。






(最初の最初)

就職活動で、ある大学機関事務職の面接を受けることとなった。

面接は順調だったのか、それとも他に理由があるのか、面接が終わり数分後に予想外の展開を迎えた。





「あなたを採用しようと思います。」







そ、そういうものなの?





「ここで働くかどうか、今、ここで決めて下さい。」





ナヌッ!?



 

今? ここで? 一体何を言ってるんだこの人は? 

合否は近い将来私の口が何を発するかによって決定されるようだが・・・

そこは実家から遠く(県外)、一度は親の意見なども聞いておきたいと思ったものだが、そのような猶予は与えられないようだ。


人生を左右しかねない重大な問題に私の緊張感は一気に高まった。
そこで断ったとしても、まだ他に面接に行く予定の場所はいくつかあったし、正直、就職するということのリアリティに欠けていた面もあった。

それにしても展開が速すぎる!

採用試験としては不適切な取扱いのような気もするが、当事者としてはそんなことは言っていられない。


しかしまぁ、こんな感じで就職先が決まるなんて、そこに就職するべき運命なのだろうか?



ほんの僅かな時間でいろいろ考えましたが、唯一気になる点だけ確認して、それが大丈夫であれば就職を決定しようという考えに落ち着きました。


「気になる点」とは、私にとって非常に重要な問題であったため、省略するわけにはいきません。

そこは医学部附属病院をかかえる大学であったため、病院で働く可能性があることが予想できました。

しかし、それだけは避けなければなりません。なにしろ、体内の様子を少し想像しただけでも貧血状態に陥る私は、保健体育の時間には毎回保健室に駆け込むという「血に弱い」性格。わざわざ病院で働くなどということは考えられないことだったのです。

人事のことなど知らない私としてはどうしても聞かなければなりませんでした。


私:「いろいろな部署がありますが、病院で働くということもあるのでしょうか?」


人事担当者:「あぁ、まずそれは無いです。」


なんと心強い一言!

人事担当者としては何故にそのような質問を受けたのか分からなかったでしょうが、就職を決定づける重要な事項は聞くことができました。その場で就職は内定し、その後は残りの学生生活を満喫することとなりました。





(4月)

何故か私は病院の受付に立っていた。

約束が違うじゃないか・・・  などと言える立場でもない(涙


そこでは、計算や保健請求をするために病名や病気の症状の知識、筋骨図を見て覚えたりと、私にとっては「避けたい仕事」のオンパレードだった。


残業してまで医学大辞典などを開いていると、速攻でメマイがする、焦点が合わない、気持ち悪い・・・ 当然、一度調べたことでもあっという間に記憶から消えていってしまう(><)


だから、「今ひとつやる気が出ない」のも道理。

もう辞めちゃおうかな・・・ 今日か、明日か、毎日気持ち悪いんだから仕方が無い。。。





(1年9ヶ月後)

「実家近くの大学へ異動する希望はないか?」

人事交流があるので、そういうことも可能だということは途中で知らされた。

すぐにというわけではないが、いつかは・・・ ということで「有る」と答えていた私に転機が訪れました。


異動の辞令を頂戴した。

早くも別の大学に異動か? と、驚いたがどうやら違うようだ。


場所は・・・・  その大学が持つ別の病院




交流の有る大学へ異動させる前にイロイロ経験を積ませたいという意図があったのだろう。

また病院とは意外な人事異動だったが、これも運命だと割り切るしかない。

もうふんぎりが付いた。

私は病院マンだ、やるしかない!


本部と離れた場所にあるその病院に車で向かう道中、人事担当者は病院の状況を大まかに説明してくださった。前々任者はあまりの多忙で精神的に参ってしまったことや、係長は殆ど仕事にタッチしないことなど、まるで良い情報は無かったが、最後にこう付け加えてくださった。





「山本君なら大丈夫!」




いつだって人事担当者は私を安心させてくれる。

10分ほど前に初対面を果たしたばかりの方が発した言葉だとは到底思えないほどの力強さがそこにはあった。 もう、どうにでもしてくれ




その病院では、着任早々にコンピュータシステムの入れ替えや、数年ぶりに会計の検査があるということで、通常業務に加えてやらなければならないことが山ほどあった。


係内は、係長、私、パートのおばちゃん2人の計4人体制。

4人だから小さい病院と思うには早計、交流のある同等規模の病院では20人前後が医療事務に当たっていた。

なぜたった4人なのか?  そんなことを考えている暇もなかった

まぁ人員が少ないだけに仕事も大変。

少数精鋭で当たらねばならないまさにプロジェクトX、そこはエリートしか立ち入ることの許されない聖域だった。


ある時、係長に呼ばれると、彼は私の前で非常に丁寧に製本を始めた。

表紙、背表紙、まるで業者さんに頼んだかのような出来の良さ。

これほど綺麗に出来上がるものなのか! と関心させられたが、その行為には理由があった。数年間製本してなかった数百束にもなる伝票類を会計検査を受けるに当たり大急ぎで製本しなければならなかった。係長はたった一回、私にやり方を見せて、後は全部やっておくように、しかも今やったように綺麗に仕上げるよう告げて去っていった・・・・


ある時は、係長が唯一引継いでいた報告書類の提出を完全に忘れていて、どういうわけか私が直筆で詫び状を書く(相手は後の文部大臣)というおかしなことに・・・ ええい、こうやって書き出すとキリが無い!


ともかく、私はほとんど寝ずに仕事をしていた。睡眠時間は平均1〜2時間といったところか。一睡もしないでぶっ通しで仕事をしたことも度々。

気が付けば、「血に弱い」性格もいつしか治ってしまっていた。

というより、そんなことを考えていたら睡眠時間がなくなってしまう。



改めてメンバーを紹介しておこう。

まずはリーダーの係長。

彼は一日中 ”釣り” の話をしておられた・・・

いや、ホメすぎた、看護婦(現看護師)へのセクハラにも余念がなかった。

当時は今ほどセクハラに厳しくなかったのが幸いしてやりたい放題。

もちろん仕事などしている暇などない。頭数に入れるのは酷じゃのう・・・


頼りのパートのおばちゃん2人は、とっても仲がよろしくなかった。

犬猿の仲というやつ。

ここではこの二人を 「A」、「B」 としておこう。


そんなある日のこと。

患者さんは大勢いるというのに、なぜかパートのおばちゃんは2人とも部屋にはいなかった。

よくあることじゃ。おそらく私を過労タヒさせる気じゃろう。


すると、Aが勢い良く部屋に飛び込んできて、こうのたまうではないか


A:「わたし、宇宙人なんですーっ!!」







  ?


 

 

 

 

 

ふっ、寝不足のようだ。

意味が分からん。

 

私:「そんなことより仕事してくれないかなー?」

 

喧嘩でもしたのだろう。こんなことはしょっちゅうだった。

正直、睡眠時間が削られる原因の一つはこれだ。

 

しかし、Aはまだ仕事に取り掛かってくれなかった。

私に向かってBの悪口をまくしたてる。

もう聞き飽きたのじゃよ・・・ どっちもどっちじゃ。

 

すると、こうものたまった。

 

A:「そりゃあ確かに私も宇宙人だけど、Bさんの方がよっぽど宇宙人だと思いませんか? わたし、怖い!!」



 

 

  

 

 

 

 

 

 

な、何ィ〜〜〜 二人とも宇宙人だとーっ!!

 

って、なんだそれは?

 

私:「・・・・・いっ、いいから仕事してくれないかな〜」

 

A:「良くありません!! これは真剣な話なんですっ!!」

 

係長:「あっはっはっ・・」

 

私:ムカッ

 

私:「宇宙人どうし仲良く出来ないの?」

 

A:「だからっ、同じ宇宙人じゃないんですって!!」

 

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

と、こんな話が延々と・・・ 

 

そこへ、Bが戻ってきた。

Aは来た時よりも顔を赤くして、今にも飛び掛って行きそうな勢い。

 

A:「わたし、こんな宇宙人と一緒に仕事できません!!」

 

B:「あら、わたしは宇宙人じゃないわよ!!」

 

A:「いーえ、宇宙人ですーーっ、そうでしょー?」 ←私に同意を求めてる

 

B:「そうなの?」 ←私にむかって

 

そうなの? ってあんた・・・

 

係長:「あっはっはっ・・」

 

私:ムカッ

 

B:「山本さん、どっちが宇宙人かはっきりしてください!!」

 

オイオイ(汗) 大きく捉えれば私も含め全員が宇宙人だけど、どっちがって話になると・・・・・・・・・・・・・・ う〜む・・・・・  ハッ!?  私までこの不思議ワールドに引きずり込まれてる!!

 

私:「しっ、仕事しながら話しよっか・・・」

 

A:「このままじゃ、わたし宇宙に帰りますよ!!」

 

係長:「あっはっはっ・・」

 

私:「・・・・・・・・・・・・・」

 

 

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この類のことが頻繁に発生していた・・・

 

良く似たところでは、犬猿の仲は認めても、犬か猿のどちらかで大喧嘩になったり。

どちらでも良いではないか。

 

他にも、Aは感性が豊かなのか、「プリンターが紙を食べた←紙づまり(毎日)」 とか、「入力した時はちゃんとなっていたのに、機械が勝手にデータを入れ替えた←入力間違いの言い訳」 など、理解に苦しむ名言をいくつも残してくれた。

「私のことを分かってくれない」 とか言われた日には、こっちが泣きたくなったわ!

 

 

 

楽しそうじゃろ?  こうして私はしばらくの間、心から笑うことがほとんど無くなっていった。

 

この時は精神的にもかなり弱り、僅かな睡眠時間でさえ仕事をしている夢を見る状況に「何故生きる?」と思ったりしたものでしたが、その後、様々な係を経験するも、とことんやるクセがしっかり残っており、また、この時ほど時間に余裕が無いわけではないので、仕事が楽しくなってきました。私にとっては非常に良い、無ければならない経験だったように思います。

 

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